top of page

観点別評価の実施|高校での取り組み方とは?実施の目的や概要を解説



令和4年度より、高等学校においても「観点別学習評価」の具体的な実施が求められていますが、いわゆる観点別評価について、どのように理解し、またお悩みをお持ちでしょうか。

検討会や研修を実施して、方向性や進め方がほぼ決まっているという方もいる一方、言葉はよく耳にするけれどまだ具体的なイメージがわかないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは高校での観点別評価についてざっくりとかみ砕いてご案内するとともに、公的資料の参照先も示すことで、関係者の方々の理解の一助になればと思います。



目次

 


1. 観点別評価とは?

 

観点別評価とは、学習指導要領に示された目標や指導事項に照らして,学習状況をいくつかの観点に分けて,その目標や指導事項に対して学習者がどれだけ実現できたかを評価する方法のことを言います。

【出典】東京教育研究所



2. 観点別評価の目的

 

観点別評価の目的はざっくりいうと、3つの観点で学習状況を評価するとともに、その後の指導や児童・生徒の振り返りにも役立てて、教育活動の質を向上させることです。


今回の観点別評価導入は、平成30年の学習指導要領改訂をうけて中央教育審議会でとりまとめられた「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」(平成31年1月21日)※1に沿ったもので、平成31年3月29日発出の文部科学省通知※2により「学習評価の改善」の一環として示されました。

ここでは「学習評価」を単に子供の学びを評価するだけでなく、その後の学習・指導の改善につなげるものとし、「カリキュラム・マネジメン卜の一環としての指導と評価」という考え方を打ち出しています。


もちろん、従来から児童・生徒の学習状況に配慮しつつ指導がなされてきていたわけですが、学校や教員の状況によっては

・学期末や学年末などの事後での評価に終始してしまうことが多く、評価の結果が児童生徒の具体的な学習改善につながっていない

・現行の「関心・意欲・態度」の観点について、挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない

・教員によって評価の方針が異なり、学習改善につなげにくい

・教員が評価のための「記録」に労力を割かれて、指導に注力できない

・相当な労力をかけて記述した指導要録が、次の学年や学校段階において十分に活用されていない

といった課題があるとされています。


こうした意見や、昨今の働き方改革なども考慮しつつ、学習評価の在り方については、以下の方針で検討が進められました。

①児童生徒の学習改善につながるものにしていくこと

②教員の指導改善につながるものにしていくこと

③これまで慣行とされてきたことでも、必要性・妥当性が認められないものは見直していくこと


先の文部科学省の通知では次のように、評価と指導の改善や指導要録の記載変更などが求められています。

1.学習評価についての基本的な考え方

2.学習評価の主な改善点について

3.指導要録の主な改善点について

4.学習評価の円滑な実施に向けた取組について

5.学習評価の改善を受けた高等学校入学者選抜,大学入学者選抜の改善について


さて、以上のような経緯の中で、「観点別評価」についておさらいします。


観点別学習状況の評価とは?

「学習指導要領に示す目標に照らして、その実現状況がどのようなものであるかを、観点ごとに評価し、生徒の学習状況を分析的に捉えるもの」

(『学習評価の在り方ハンドブック』※3)


そしてそれが単なる評価にとどまるのではなく、こうした学習評価を通して、「教師が指導の改善を図り、生徒が自らの学習を振り返って次の学習に向かうこと」ができるようにし、教育課程の改善につながるものとして期待されています。

そのため、生徒に評価の結果をフィードバックし、評価の出し方については保護者へも説明し、理解を得ることもまた必要となります。



【出典】


※1 児童生徒の学習評価の在り方について(報告)

平成31年1月21日 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会


※2 小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)

平成31年3月29日 30文科初第1845号


※3 『学習評価の在り方ハンドブック』(高等学校編)

令和元年6月14日 国立教育政策研究所 教育課程研究センター



3. 観点別評価の内容

 

実際に観点別評価が始まると何が変更になり、どんなことをしないといけないのかを解説します。

 

3つの観点

 

新学習指導要領では各教科等の目標及び内容が、


・知識及び技能

・思考力,判断力,表現力等

・学びに向かう力,人間性等

      

の資質・能力の三つの柱で再整理されました。


これに合わせて観点別評価の観点についても、


・知識・技能


・思考・判断・表現


・主体的に学習に取り組む態度


の3観点とされ、各教科の観点の趣旨も、文科省通知に別紙として添付されています。

別紙5 各教科等の評価の観点及びその趣旨(高等学校及び特別支援学校高等部)より


 

評価のタイミングについて(評価規準)

 

学期末や学年末での事後評価では、学習・指導の改善につながりにくいため、学習を進めていく途中でも評価を行うことが必要になります。具体的なルールはないため、学校においてそれぞれ工夫の余地がありますが、例えば各教科の単元毎や題材、課題提出の期限などを区切りとして、定期考査以外の評価の機会を設けることになるでしょう。


国立教育政策研究所 教育課程研究センターがとりまとめた、「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料※4においては、教科ごとに単元や題材などの「内容のまとまり」ごとの「評価規準」例や、その作成手順、運用の事例が紹介されています。


例)理科 ~目次より抜粋~

【出典】

※4 「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料

令和3年8月20日 国立教育政策研究所 教育課程研究センター


 

観点別評価のつけかた、とりまとめかた

 

単元や題材、定期考査などでそれぞれ観点別の評価を複数行った場合には、学期毎や学年末において、1つにとりまとめる必要がありますが、これも厳密なルールは無いため、各学校において検討し、定めておきます。

細かい評価をABCで行った場合、最も多い記号にするなど、A=3、B=2、C=1のように数値化して、平均値から換算することが考えられます。


ABC評価の区別は

A:「十分満足できる」状況と判断されるもの

B:「おおむね満足できる」状況と判断されるもの

C:「努力を要する」状況と判断されるもの

とされていますが、同じランクでも幅があり、適切に取りまとめできない可能性もあります。細分化した評価の時点ではABCではなく幅を持たせた数値で評価しておき、取りまとめの際にABCに換算するやり方も、現場の運用においては有り得るでしょう。


また、評定は従来通り5段階ですので、上記のとりまとめ方と同様、ABCの数の組み合わせに応じて定めたり、数値化して平均値から換算したりすることになります。


生徒へのフィードバック、保護者への説明にも対応できるよう、「評価規準」の設定、評価のとりまとめのルール化、そしてなによりきちんと評価の記録をしていく必要があります。



〇定期考査の評価

定期考査では、複数の単元、題材にわたって出題されるため、単純に合計点を評価に直結させることができません。ある学校では、それぞれの問題がどの単元や題材、観点に結び付くものかを細かく分析し、問題ごとの正誤が適切に評価に結び付くよう設定、管理することにしています。


〇主体的に学習に取り組む態度の評価

この観点については、必ずしも単元ごとに評価を定めるのではなく、ある程度長い区切りの中で評価することも考えられるとされています。また、学期ごとの評価がC→B→Aや、C→C→Bのように向上していった場合に、単純に平均値や多数の記号で年度末の評価を定めるのではなく、カリキュラムマネジメントを通して成長した最終評価を重視するべきではないか、という意見も聞かれます。

一方、学年の初めでA評価をつけた場合、「向上」という点ではその後の評価はしにくく、物足りなさを感じながら評価していくケースもあるでしょう。

とりまとめルールを検討する際には、観点ごとの特性も考慮に入れ、生徒の学びや学習指導の改善につなげるという大きな目的を忘れずに、柔軟かつ適切な配慮を心掛ける必要があります。


4. まとめ

 

以上、簡単ではありますが、観点別評価の概要と、取り組み方についてご紹介いたしました。まだ運用実績がほとんどなく、手探りで進めていくしかありませんが、大きな趣旨を念頭におきつつ、学校内での検討をしていただければと思います。

 

票簿会計センターの「教務管理システム」では、

公立校をモデルにした観点別評価にも対応します。

観点別の到達度、評価補助簿の出力、最終的な評価修正にも柔軟に対応しております。

詳しくはお問い合わせください。


bottom of page